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クラフトを支える軽天屋さん「完成をイメージして」

”軽天屋さん”という言葉を聞いたことはありますか? LGS(軽量鉄骨材)を使って壁や天井の骨組みをつくっていく職人さんのことです。

今回お話をうかがったのは、軽天屋の有馬正和(ありま まさかず)さん。普通の軽天屋さんがやらないような細かい納まりにも対応してくれる、クラフトの現場にいなくてはならない職人さんです。

後から入る職人さんに迷惑をかけないように組む

室内にはLGSの塊がどんと置かれています。さあ、これからちゃちゃっと組み立てて行くのか…期待していると、そうでもないことがわかりました。

「ここは間接照明が入るから、ちょっと難しいな…」と図面をまじまじと見つめ、続けて壁を確認する有馬さん。

「ここに電気が通るか、配管が通るかを考えて骨組みを組まないと、電気屋さんや設備屋さんに迷惑がかかってしまいますから」

ほとんどの軽天は、その言葉どおりに”軽量鉄骨”で”天井”をつくるのが主な仕事です。しかし有馬さんの場合はただ組み立てて行くに留まらず、工事全体の流れを把握し、その作業がすべて滞りなく進行するように計画しているのです。

また、梁型や間接照明にあわせた複雑な納まりにも対応します。クラフトのリノベーション現場において、最優先すべきはスピードではなく、計画性と丁寧さだということがわかりました。

完成を頭の中でイメージし、組み方を検討する

まず最初に、骨組みを”どう組むか”を考えていくそうです。当然ですが、それはクラフトから受け取る図面と展開図には描いてありません。

完成をイメージし、そこから逆算し、検討していく。PCではなくご自身の頭の中で、あらゆる可能性を探ります。

計画通りに進めるうえで何よりも大切なのは、”下準備”。図面を確認し、きちっと寸法を測り、慎重に墨出しを行います。ときどきコンクリート躯体の凹凸を手作業で削ってフラットに。

やっぱりものづくりを諦めきれなかった

言葉遣いや物腰がやわらかな有馬さん。お話をうかがってみると、もともと会計事務所で働いていたということがわかりました。

「親戚が軽天屋をしていたから、高校生の夏休みなんかに手伝っていました。商業系の学校を卒業後して、しばらく会計事務所に勤めていたんですけど、やっぱり、ものづくりが好きだったんですよね」(有馬さん)

簿記もお持ちで数字が得意なら、現場でも役立つのでは? と聞いてみると、「いえいえ、役立つのは確定申告のときだけですよ」と照れくさそうに笑いました。

クラフトにはレベルの高い要求をされるけど

一度就職したものの、現場の空気が忘れられずにこちらの世界に。最初に勤めた軽天屋さんは親方と2人、大変なことが多かったそうです。

「軽天屋はとにかくスピードを求められるんですよ。その会社は新築マンション一棟を受けることが多く、まさに時間との勝負でした。でもその時に、軽天以外のボードやGL工事の仕事も覚えることができました。全部覚えるのに10年かかったけど、その技術は今でもすごく役に立ってますね」

こだわりあるお客さまのために、職人さんへの要望が多くなってしまうクラフト。そんなクラフトが安心して有馬さんにお任せできるのは、安定した技術と丁寧な仕事ぶりを知っているからです。

手を抜けないし、プレッシャーですよ

「クラフトさんにはレベルの高いことをたくさん求められますね。昨日は、TVボード・暖炉・間接照明が一体になった造作家具の下地をつくってきました。まさかこんなのを軽天でつくるとは思わなかったし、今までやってきて初めてですよ(笑)」

写真を見せてもらうと、確かに軽鉄でつくられた下地枠。納まりが難しく、時間がかかったとか。

「大変だけど、ものづくりの達成感はあります。もちろん仕上げをしたら見えないけれど、僕らのやり方が、後から入る職人さんの作業に大きく影響します。そんな人たちのことを考えながら、間違いのないように組み立てて行く。手を抜けないし、プレッシャーですよ」

この日一緒に作業していたのは、同じ会社の礒部さん。「有馬さんにはいろいろ仕事を教えてもらいましたね」。10年ほどの付き合いになる2人は、現場でもとても仲がよさそうです。

プレッシャーを感じながらも、イキイキとした表情で作業を進める2人。2人の周りはどことなく空気が弾んでいて、見ている私も現場にいることを忘れそうになりました。ものづくりが大好きで、この仕事を心から楽しんでいるということが、ひしひしと伝わってきました。

*職人さんシリーズバックナンバー*
〈クラフトを支えるタイル屋さん「繊細に、ときに大胆に」〉
〈クラフトを支える大工さん「段取り8割のスピリット」〉
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