クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」 | リノベーションスープ

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クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

朝の光のように爽やかな白いタイル。重厚で趣たっぷりのアンティーク煉瓦。

クラフトのリノベーションでよく使われるタイルですが、タイル屋さん次第で仕上がりが違ってくることをご存知ですか? あるときは時計職人のように正確に、あるときは芸術家のように大胆に。オリジナルの腕とセンスが必要です。

今回は「納得するまでタイルを貼らない」というタイル職人・金子浩之(かねこひろゆき)さんにお話をうかがいました。

1枚ズレるとね、後のタイルもどんどんズレてくるんです

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

「そんなに撮られたら緊張しちゃうな〜」と金子さん。かたわらには自前のスピーカーを置き、明るいポップミュージックをBGMに。話していると人当たりがよく『やさしいお兄さん』という印象ですが、ふと見ると、ぐっと真面目な表情。

先ほどの笑顔はどこへ飛んで行ったのか、タイルを手にした金子さんは戦いに挑む勇士のようです。

「1枚が1mmでもズレるとね、後に貼るタイルもどんどんズレてくるんですよ」

その切りかえの鮮やかさには、目を見張るものがありました。

キレイにしたいと思うんですよ。自分で見て気持ちがいいから

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

「この配管まわりが難しいんですよ。R(曲線)の部分も目地と同じ2mmくらいに納めたい。まあ目地材を埋めたらあまりわかんなくなるんですけどね。それでもキレイにしたいと思うんですよ。自分で見て気持ちがいいから。あ~、これも違うなぁ…」と言いながら、ふたたびタイルをカットします。

そして壁に貼るときは、画家が最後に竜の目を描くときのような表情に。見ているこちらも、思わず息を止めてしまいます。

「は~っ。できた。こんなもんですかね。後は乾くのを待って、明日は目地をやります。これからあっちのアンティーク煉瓦の目地をやりますけど、見ますか?」

全体のバランスを見ながら、感覚ではらい落としていきます

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

金子さんの後について、別の部屋に移動。壁一面のアンティーク煉瓦は、まだまだ目地がない状態でした。

黒いモルタルと水を混ぜ、目地の材料をつくるところからスタート。ちょっと柔らかめに仕上げ、コテではなく、チューブでたっぷりと入れていきます。エクレアにクリームを詰めるように。

先ほどのタイル貼りとは一転、金子さんの手つきはリズミカルに、ためらうことなく動きます。

しばらくすると、先ほど埋めた目地を、今度はブラシではらいはじめました。

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

「深く削ったり、粗めに残したり。全体のバランスを見ながら、感覚ではらい落としていくんです。遅すぎると目地が固まりすぎちゃうし、このタイミングがわりと大切。うかうかしてると煉瓦が水気を吸っちゃいます。夏は固まるのが早いし、季節によってもタイミングが違いますね」

デザイナーのイメージにあわせて整然と見せたり、ラフさを表現したり。タイルの仕上がりは、タイル屋さんの腕とセンスが大きくモノを言うことがわかりました。

親方を見てたら『自分もまだまだだな』と思いますね

クラフトを支えるタイル職人「繊細に、ときに大胆に」

タイル職人さんになって20年ほどになるという金子さん。実はクラフトは、金子さんの親方さんとは30年以上のお付き合いとなります。

「親方は厳しいですよ。今は丸くなりましたけど、最初は叱られてばっかりでしたね。生粋の職人なので『見て覚えな』ってヤツで、苦労しました」と話します。しかし『一番尊敬する人は?』と質問すると「やっぱり親方かな」と。

「美しい仕上がりに対しての厳しさがものすごい。もちろん僕も美しく仕上げることを心がけてますが、親方を見てたら『自分もまだまだだな』と思いますね」と照れくさそうに話してくれました。

コテはキレイに磨いていないと、滑りが悪いから

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金子さんのこだわりの1つが、いつも道具をキレイにすること。使っているコテを見ると、ピカピカに磨き上げられていました。

「ああ、それね。いつも帰って、磨くことにしているんです。キレイにしてないと滑りが悪いから」と。職人さんにとっての道具は、料理人の包丁のように、マラソン選手にとってのシューズのように、仕事ぶりを左右します。

「クラフトのプランは、床とか壁とかタイルを使うことが多い。家の内装にここまでタイルを使うケースはあまりないですね。毎回使うタイルも違うし、いろいろなことにチャレンジできるからたのしいですよ」

自身のことを語るときは、目を細めて照れくさそうに笑う金子さん。しかし作業が始まると、1mmのズレを許さないストイックな視線に変わります。その眼差しが、金子さんが本物の職人さんであることを語っていました。たとえ本人がそれを否定したとしても。

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