
断熱性がある家ととない家では、室内のあたたかさはまったく違います。リビングが広かったり、吹き抜けがあったりすると、室内があたたまりにくくなるため、ますます必要です。
しかしごく稀に、断熱材が入っていない住まいがあります。入っていても古くて劣化していたり、部分的に入っていなかったり。古いマンションでもありえるので、リフォームの際にはしっかりとチェックしておきましょう。
※こちらは、2015年10月14の記事を加筆修正しています。
断熱性能が高い家は、なにが違うの?
断熱性能には、どのような役割があるかご存知ですか?
断熱性能が高い住まいは、言ってみればユニクロのヒートテックを着ているようなもの。ヒートテックを着ると、身体が冷気に触れず、体温で保温されますよね。住まいもこれと同じ原理です。
窓ガラスや外壁から外の冷たい空気も入りにくいし、中のあたたかな空気も逃しにくい。エアコンやヒーターが効きやすく、省エネで経済的です。
断熱リフォームの方法
〈断熱リフォーム1〉 床・壁・天井に断熱材を入れる

断熱リフォームで欠かせないのが、断熱材です。断熱工事には、〈充填断熱〉か〈外張り断熱〉のどちらかの工法を採用します。
この2つは、わかりやすく言うと、先述したようにヒートテックを着るか、コートを羽織るかの違いです。〈充填断熱〉は、構造躯体のなかに断熱材入れてヒートテックを着たような状態。これに対し、〈外張断熱〉は外壁を断熱材で囲んでコートを羽織ったようなイメージです。一般的に個人住宅には、工期もコストも低い〈充填断熱〉のほうが多く採用されています。
断熱リフォームで注意したいのは、オーバースペックになっていないかどうか。あまり気合いを入れて断熱しても、北海道ほど寒くない東京ではムダになってしまいます。そのあたりをきちんと理解したうえで、土地柄にぴったりの断熱工事を行いましょう。
〈断熱リフォーム2〉 窓に断熱ガラスを入れる
断熱リフォームで大きなポイントとなるのが、窓です。
ガラスは壁や屋根よりも断熱性能が低く、室内の熱損失も大きい。いくら断熱材を入れていても、窓が大きければ大きいほどガラスから冷気が入ってきてしまいます。この場合は、高性能なガラスに交換するのがおすすめです。
たとえば、ガラスとガラスの間に高断熱のガスを閉じ込めている〈ペアガラス〉。また、ガラスとガラスの間に空気層を閉じ込め、室内側のガラスを金属膜でコーティングしている〈Low-E複層ガラス〉。どちらも断熱性能が高く、窓からあたたかい空気が逃げるのを防ぎます。
アタッチメント付きの断熱ガラスなら、既存のサッシにそのまま取り付けることができるため工事も簡単。断熱材を入れるよりも手軽に断熱性能をアップできます。「今年の冬に向けて急いで断熱したい」という方は、ひとまず断熱ガラスに替えてみましょう。
もちろん、インナーサッシ(二重窓)も有効です。
断熱リフォームの費用はどのくらい?
断熱リフォームの費用の目安(戸建て)

同じ断熱リフォームでも、木造一戸建てとマンションでは方法が異なります。
一戸建ての断熱リフォームでは、グラスウールを充填していきます。グラスウールはガラスの繊維で、あたたかい空気の層をつくってくれます。
床はグラスウールのボード状の断熱材を根太の間に固定。壁や天井は、断熱材が入った袋を柱や梁の間に、隙間なく敷き詰めていきます。費用はマンションやRCのビルよりも割安です。
●〈木造一戸建て断熱リフォームの費用〉
約1800円/㎡当たり
(グラスウールを充填・解体費用・仕上げ費用を除く)
断熱リフォームの費用の目安(マンション)

マンションの断熱リフォームでは、発砲ウレタンを吹き付けていきます。
車にウレタンの入ったドラム缶を搭載し、ホースを部屋まで伸ばします。ホースは長いため10階くらまでは対応可能。専用のガンで、コンクリート躯体に直接吹き付けていきます。発電機を使用するため工事が大掛かりで、木造の戸建てより割高です。
また、断熱面積によっても単価はかなり変わってきます。
●〈マンション断熱リフォームの費用〉※断熱面積60〜100㎡程度の場合
¥295,000〜/一式
(発砲ウレタンを吹き付け・解体費用・仕上げ費用を除く)
と考えておきましょう。
スケルトンリフォームのタイミングであれば、床・壁・天井を壊したついでなので、単純に「断熱工事の費用が増える」と考えればOKです。しかし断熱リフォームだけしようとすると、壁を壊し、断熱材を充填し、さらに下地・クロスをつくる。結構な大仕事で費用がかかります。
断熱リフォームは、フルリフォームのタイミングで行うほうが経済的です。
気密性アップでより高い断熱効果!
先ほど、断熱性能が高い住宅は”コートやセーターを着ているような状態”とお伝えしました。しかし、コートも襟元から冷気が入ってくるとぞくぞくしますよね。あたたかいけれど、やっぱり寒いような…。
そこで「ちょっとした隙間も塞いでしまおう」と考えたのが気密性です。断熱材の上からサランラップでぴったりと包むように、あらゆる隙間という隙間を塞いでしまいます。
気密性を高めることができれば、断熱性能は100%に近い効果を発揮してくれます。そういうわけで、断熱性能と気密性は切っても切れない関係。リフォームの際はこの2つをセットで考えましょう。
※ただし、断熱性能が高い=結露の原因にも。24時間換気を心がけましょう。
まとめ
断熱リフォームについてご紹介しました。
もともと日本の住まいは夏向き。冬よりも”夏をどう乗り切るか”ということを重視して住まいづくりが行われてきました。夏は風通しがよくて涼しいけれど、冬は寒い
1989年、公庫融資を受けるための条件に、断熱が義務化されたときも、世の中の断熱性能への意識は低く、「うーん。そうしないと融資できないんでしょ?」という感じでしぶしぶ導入したようです。ですから、当時建てられた古い住宅には壁と天井に断熱材が入っているのに、なぜか床には入っていなかったりすることも。「心地よさのため」ではなく、「公庫融資の条件をクリアするため」に断熱材を入れただけ、というケースもあります。
中途半端な断熱では、まったく効果がありません。床・壁・天井をしっかりと断熱してこそ断熱効果があるというもの。リフォームするなら、間取り変更やデザインの変更と併せて断熱性もアップしましょう。このほうが、将来あわてて断熱工事をするよりもはるかに経済的です。
断熱リフォームをするなら、タイミングが大事
断熱リフォームは、スケルトン(構造躯体のみ)の状態でやるのがベストです。リフォームで住まいの内側から性能アップしてみませんか?