トップインタビュー『Cassina ixc./カッシーナ・イクスシー』後編 | リノベーションスープ

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トップインタビュー『Cassina ixc./カッシーナ・イクスシー』後編

ラグビーに明け暮れていた大学時代。卒業後、レナウンに入社。その後はレナウンアメリカ、アクタス、グレープストーンの代表を経て、カッシーナ・イクスシーの代表に就任。森社長は、まったく異なる業種で指揮をとってきました。

そして今、ものごとが息つく暇もないほどのスピードで変わり続ける時代に。「いま求められているのは、”その人のために”何かをしてあげること」とシンプルな答えを導き出した森社長にお話をうかがいました。

※前半のインタビューはこちらからご覧ください。

「できることは全部やった」 就任1年で業績は黒字回復へ

カッシーナ・イクスシー 青山本店

ーーー森社長が就任された2011年、カッシーナ・イクスシーは赤字だったとうかがいました。就任してまず、何が課題だと思いましたか?

森社長
社員の意識です。ここを変えることが重要だと思いました。カッシーナは有名ブランドですから、昔はお店に家具さえ並べていれば放っておいても売れていたんです。でも時代とともにお客さまの嗜好性が変わり、変化に対応できなくなっていた。

まずは、社員みんなのメンタリティを変えることが重要だと思いましたよ。意識は行動につながりますから。

ーーー具体的にどのようなことをなさったんですか?

森社長
まずは社員全員と話をして、意識を統一しました。マニュアルを作るのではなく、僕の考えを伝えたんです。「家具だけを売るんじゃないよ」「お客さまが求めているのは心地よい空間なんだよ」と。

そのために家具だけじゃなく、照明、テキスタイル、ラグ、絵画といった空間をつくるあらゆるアイテムについて勉強することを勧めました。最初の一年でできることは全部やりましたね。意識も、接客も、店のレイアウトも。

ーーーその結果としていかがでしたか?

森社長
1年でお客さまが戻って来てくれて、業績も黒字回復しました。でも社員のみんなは大変だったと思いますよ。とにかく思いっきりやったから。

革新的に攻めていくとともに、アナログな部分も大切にしていきたい

ーーーカッシーナ・イクスシーが大切にしていることはなんでしょうか

森社長
さっきも言ったけど、やっぱりお客さまに「どういう暮らしをしたいか」「どういう空間にしたいか」をお聞きして、提案することです。家具を”売る”のではなく、空間を”カスタマイズする”。

多様性に応えるためには、その人のために”何かをしてあげる”ことが大切です。だから僕は、社員ととことんコミュニケーションをとる。ここ(本社)にいる社員には、うっとおしいくらい話しかけてますよ。「あんなに熱い人は見たことない」って言われるくらいにね。

ーーー社員とのコミュニケーションが、なぜお客さまへのアプローチに?

森社長
本当は僕が、お客さまと直接コミュニケーションをとりたい。でも全員に会うのは無理ですよね。だから日常的に社員に、僕のメッセージを送る。社員を通してカッシーナ・イクスシーの考えていること、やりたいことをお客さんに伝えているんです。そのメッセージが必ずお客さまに伝わると思っています。

ネット社会になればなるほど、アナログなコミュニケーションが求められる。革新的に攻めていくとともに、アナログな部分も大切にしていきたいですね。

トップランナーであり続けることが、カッシーナ・イクスシーの存在意義に

カッシーナ・イクスシー 青山本店アートギャラリー

ーーー競合を考えることはありますか?

森社長
もう、家具だけが競合じゃなくなってきています。たとえば僕はアクタスにいた頃、ルームフレグランスを業界で一番最初に売り始めたんです。イタリアで契約してね。その頃はザ・コンランショップも、カッシーナさえも扱っていなかった。でも今は当たり前のようにインテリアショップやアパレショップでも売ってますよね。

だから同じ業種だけ見て、『自分たちのライバルだ』とか言う時代は終わったんですよ。

ーーーそんななかで、カッシーナ・イクスシーはどのような立ち位置でありたいと思っていますか?

森社長
革新的でありたい。伝統をただ守るのではなく、時代に合った提案をしていきたいと思っています。リスクはあるけど新しいことに挑戦し続けなきゃいけない。トップランナーであり続けることが、この業界のためになるんじゃないかな

リーディングカンパニーとしての明確な立ち位置をキープしたい

ーーーそんなふうにずっと走り続けるのは、正直、疲れませんか?

森社長
僕はそういうことにすっごく向いてるわけです(笑)。小さい頃からそうなんだけど、人がやったことないってことに対するチャレンジ精神が旺盛。とにかくじっとしていたくない。

日本社会ではそういう人間は弾かれるんだけど、僕は周りの理解があって、たくさんチャレンジさせてもらいました。だから社員にも「自分で考えていいと思うことをやればいい。失敗したって構わないから」と言っています。

ーーー森社長のセオリーが会社全体に浸透しているんですね。これからチャレンジしたいことはありますか?

森社長
…まあ今、チャレンジしてますからね。いつもしてますよ。

でも経営者として考えると、ザ・コンランショップやジーマティックなどグループ会社でシナジー効果を出しつつ、時代のなかでリーディングカンパニーとしての明確な立ち位置をキープしたい。その努力は今もやってるし、これからもやり続けなきゃいけないな、と思っています。

高校~大学時代、ラグビーで学んだ強いメンタリティ

(写真/慶應大学ラグビー部で活躍する森社長)

ーーーそんな森社長のイメージとうまく結びつかないのですが、長崎での青年時代は三島や太宰に傾倒していたそうですね。

森社長
そうそう。僕はね、中学時代は素行の悪い文学少年だったんですよ(笑)。ケンカもよくしたし、優等生ではなかった。三島由紀夫の作品の破滅的なところに惹かれてたのかな….。とにかく当時、映画や本などをむさぼるように観てたんですよね。

そうこうしているうちに高校でラグビー部に入って、『One for all, All for one』のメンタリティを教わりながら、人生が変わり始めた。もうね、鬼のような時代でしたよ(笑)。炎天下でも「水飲むな」って言われて、みんなバタバタ倒れていく。でもここでメンタルのタフさを学んだんですよね。すごく変わった。

ーーーそれから大学でもラグビーを続け、レナウンに入社後、35歳でレナウンアメリカの代表に就任。アメリカと日本の暮らしを比較して、気がついたことはありますか?

森社長
当時はオフィスのあるマンハッタンから、電車で一時間くらいの戸建てに暮らしていました。家のまわりに自然がたくさんあった。広い芝生の庭も。でもオフィスのまわりにも、公園がたくさんあるんですよね。パリ、ロンドンも、ちょっと歩いたら緑豊かな公園がある。欧米の都会には自然があるんですよ。

東京や大阪で暮らしていると、自然を感じることが少ないですよね。日本は海と山に囲まれているのに。昔の日本はこんなはずじゃなかったと思うんですよ。借景といって、窓で緑を切り取ってインテリアにするという精神性の高いことをやっている。これは世界でも珍しいことなんです。暮らしのなかに、癒しは必要だと思いますよ。

家具は、暮らしに「癒し」をもたらすことができる

Cassina/SCIGHERA SOFA

ーーー家具は、暮らしに癒しを与えられると思いますか?

森社長
もちろんです。家具は自然を超えることはできないけど、暮らしに癒しをもたらすことはできます。見ていると気分が高揚する。座っているとリラックスできる。一人ひとり、家具に求めるものは違いますけどね。

その想いに合わせて、空間を提案するのがカッシーナ・イクスシーの仕事なんです。ただ家具を売るのではない。お客さまとコミュニケーションをとりながら、空間をカスタマイズする。そういう存在でありたいと思っています。

編集後記

カッシーナというブランドに対し、人がめぐらせる想いはさまざまかもしれません。しかし、少なくとも今回お話を聞いてみて「高級ブランド」というイメージは別のものに置き換えられました。

歴史とストーリーがあるブランド
家具ではなく、”空間”を売るブランド
その人のために、何かをしてくれるブランド
サプライズに満ちたブランド
自分の心の中の『wants』が見つかるブランド

それにしても森社長の、垣根をさっと越えて心に入り込んでくる人なつっこさ。きっと子供のころ、誰も登らないような木にチャレンジしたり、川に飛び込んだりしたような感覚でさまざまな革新を成し遂げてきたんだろうなと、思いました。『One for all, All for one』の気持ちで。

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Cassinaの日本総代理店、株式会社カッシーナ・イクスシー。オリジナルブランドとともに、絵画やラグ、照明を取り揃え、空間をトータルでコーディネートしています。

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