トップインタビュー『Miele Japan/ミーレ ジャパン』後編

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トップインタビュー『Miele Japan/ミーレ・ジャパン』後編

ミーレ(miele)トップインタビュー

「Mieleの製品で効率的に家事をこなし、ゆとりの時間を豊かに過ごしてほしい」

と語ってくれたのは、Miele Japanの松原秀樹社長。共働きが増えた今、”家事の時短”は女性の重要課題になっています。1899年、Mieleが誕生したきっかけも。「女性の労働をもっと楽にしたい」というものでした。

一世紀の時をこえて、同じ想いで製品を作り続けているミMiele。今回は、Mieleの歴史と松原社長ご自身の歴史についてうかがってみました。

※ぜひ〈インタビュー前編〉もご覧ください

働く女性のために、1899年代から改良に改良を重ねてきた

ミーレ(miele)トップインタビュー

ーーーMieleの誕生は1899年。そんな時代に『女性の労働の手助けする』という考え方があったことに、まず驚きました。

松原社長
そうですよね。Mieleは、カール・ミーレとラインハルト・ツィンカンの二人が、農場で働く女性のために、クリームやバターの分離器をつくるところからスタートしました。

1914年には、もうすでに電気モーターを搭載した洗濯機を販売していたんです。樽で水漏れがしないように、上質な木材でつくる必要がある。部品も耐久性の高い鋼(はがね)である必要があったんですね。

もちろんすぐに売れたわけじゃありませんが、その頃から素材にこだわって改良を重ねてきました。それがなければ今、こういったカタチで日本の皆様に家電を供給することはできなかったでしょう。

『身の丈経営で、急拡大せずに慎重にやっていく』というのがMieleのやり方

ミーレ(miele)トップインタビュー

ーーーやはり、Mieleにとって”家族経営”というのはとても重要なことだったのでしょうか?

松原社長
もちろんです。家族経営だからこそ、今の業態が固まったんです。実はMieleは、1912年に車を製造していました。でも143台つくったところで止めてしまった。

ーーーなぜですか?

自動車製造は事業を拡大しないといけないし、銀行にお金を借りなければならない。すると家族経営を守れなくなってしまう。ですから、「私たちは強い所に特化してやっていこう」と決めたんです。

おかげで創業以来ずっと無借金経営です。”身の丈経営で、急拡大せずに慎重にやっていく”というのがMieleのやり方です。

私たちは、Mieleのヒューマンタッチを踏襲したいなと思っています

ミーレジャパン

ーーこれだけ企業規模が拡大しても、2つの創業家による家族経営が仲違いせずに続いているのは、すごいことですよね。

松原社長
はい。Dr.ミーレはものづくりに特化していて、博士号を持っている真面目な方。Dr.ツィンカンはセールスとマーケティングを担当していて、とても茶目っ気がある方。オーナーのふたりは、とてもよいバランスがあるんですよね。

おふたりには、年に6回ほどお会いしています。ドイツ本社や各国で会議の際は、各現地法人のトップも含めてみんなで食事をし、コミュニケーションを図るんです。ドバイでは砂漠に行き、キャラバンの上でとてもにぎやかな時間を過ごしました。

毎年5月には、ご自宅にディナーに招かれます。そこで退職者をねぎらったり、同僚からのスピーチがあったり…。Dr.ミーレやDr.ツィンカンの奥さまやお子さま、お孫さんたちみんなで迎えてくれます。

ミーレ(miele)トップインタビュー

プロのシェフに「家庭用ならMiele」と言われるような存在でありたい

ーーーとてもあたたかい社風なんですね。外資系なので、正直もっとドライかと思っていました…。

松原社長
私もそう感じています。Mieleの創業家は、あたたかくて、人を大切にします。方針が変わったときは、かならず世界中の支社を訪れて、自分の言葉でメッセージを伝えにいく。私たちMiele Japanは、そんなヒューマンタッチを踏襲したいなと思っているんです。

ーーーーMieleが「世界のベストレストラン50」や「アジアのベストレストラン50」のオフィシャルスポンサーになっているのは、そういう部分が関係するのでしょうか

松原社長
はい。Mieleがスポンサーになっているのは「One to Watch Award」と言って、これから活躍するであろうシェフを1人選び、賞を与えるものです。今年の「世界のベストレストラン50」では、カリフォルニアのシェフが受賞しました。日本で修行をしていて、土鍋からインスピレーションを得た方で、料理に和のテイストがあって。すごく独創的なんですよ。

ーーーーなぜそんな活動をされているのですか?

松原社長
もちろんMieleは業務用の機器は製造していません。でも、シェフが家庭で使えるような、プロ仕様に近いレベルの調理機器を出しています。海外では、一流のレストランのシェフが自宅でMieleを使っていることは珍しくありません。日本でも、プロのシェフにMieleのよさを知ってもらって、「家庭用ならMiele」と言われるような存在でありたいと思っているからです。

ナンバーワンブランド、その国が誇りに思うようなブランドで働く

ミーレ(miele)トップインタビュー

ーーー実は事前に松原社長の経歴をうかがいまして。国際協力銀行勤務後、ロレアルグループ、ユニリーバ、エスティローダーグループ、ラ・プレリージャパンなどでご活躍されていますね。家電とはまったく畑違いで。

松原社長
そうなんです。でも、私自身は「ブレていない」と思っているんですよ。

大学を卒業し、国際協力銀行に入行しました。海外とのビジネスが多く、とてもやりがいのある仕事でした。でも25歳くらいの頃、留学時代に知り合った方から「これからヨーロッパの言葉と文化を学んで、日本で活躍してくれる若い人を育てたいという人がいる」と、パリに呼ばれたんです。それがロレアルグループとの出会いでした。

ーーーものすごく意外なところから、意外なお話がやってきたんですね。迷いはなかったんですか?

松原社長
銀行とはまったく違う世界です。「このまま銀行にいれば将来は安泰だ」とも考えました。でもチャレンジするなら若いときしかない。それで渡仏を決意したんです。

ーーー人生のベクトルが大きく変わった瞬間ですね。そこからはずっと化粧品業界に?

松原社長
ええ。ロレアル、ユニリーバ、エスティローダーではマーケティングやPRを担当し、その後ラ・プレリージャパンの初代社長に就任しました。

化粧品業界に20年以上身を置いて、色々な国を巡り、たくさんの素晴らしい人と出会い、本当に素敵な経験をさせていただきました。「もうこれ以上できることはないかもしれない」と思っていたとき、Mieleから声がかかったんです。

「Mieleというブランドは本物だ」と言う確信があった

ミーレ(miele)トップインタビュー

松原社長
ここでさっきの「ブレていない」に戻るんですが、ラ・プレリーはスイスの高級化粧品ブランドです。実はラ・プレリーの顧客のほとんどの方が、Mieleを使っていたんです。それでMieleからお話をいただいたときに、「顧客層が同じなので、おもしろいんじゃないか」と。

ーーー商品は違っても顧客層が一緒だった。松原社長がこれまで歩んでいらした道は、まったく違うようでいて、つながっていたんですね。

松原社長
そうなんです。そして、私には1つのポリシーがありました。「ナンバーワンブランド、その国が誇りに思うようなブランドで働く」ということ。Mieleはドイツを代表するブランドです。大変な時期もありましたが、「Mieleというブランドは本物だ」と言う確信がありました。

ーーー松原社長のお話は、Mieleに対する愛情に満ちていますね。就任して8年と言うことですが、ずっと昔からいらっしゃったような印象を受けます。

松原社長
そうでしょうか。私自身は心から、Mieleはすばらしいブランドだと思っています。あとは私たちがその魅力をもっとアピールしていくだけです。Mieleの製品を通じて、みなさんの暮らしを豊かにすること。私たちの強いビジョンです。

家電があるおかげで、忙しくても家族と豊かな時間を過ごせる

ミーレ(miele)トップインタビュー

ーーー松原社長は、ご自宅ではどのように過ごされていますか? 私たちはリノベーション会社なので、松原社長の「暮らし」にも興味があります。

松原社長
忙しくてあまりゆっくり過ごす時間がないのですが…。でも週末のブランチは、いつも必ず私が作っています。出張に行っても、それがあるから朝急いで帰宅しなきゃいけない(笑)。

でも家電があるおかげで、忙しくても効率よく家事をこなし、家族と豊かな時間を過ごせる。こんなとき「家電があってよかった」と思います。もちろんMieleの家電も含めてです。

ーーーご自宅で、ご家族と過ごすひとときを大切にされているんですね。

松原社長
はい。とても大切な時間です。それから私は、外国人の友人宅に招かれることが多いんです。するといろんな方が、Mieleの製品をフルに活用してくれていることがわかります。シェフを呼んで、Mieleのオーブンを使った料理を披露してくれたり。奥さまから「この食洗機、とっても助かってるのよ」「この前エンジニアが来たんだけど、彼は最高ね」なんて言っていただいたり。

友人宅で、Mieleの調理機器でつくった料理をいただきながら、「Mieleにしてよかった」なんていう言葉をもらう。これも、私にとっては最高のひとときです。

編集後記

創業家で現オーナーのDr.ミーレとDr.ツィンカンについて、敬意を払いながら込めて話す松原社長。創業当時からずっと見守ってきたような熱心な話しぶりは、Mieleに対する深い愛情を示していました。

ブランディングの手腕を買われ、Mieleの代表に就任。これまでやってきた高級化粧品の客層とリンクしていたこと、Mieleがドイツのナンバーワンブランドであること、そして「このブランドは本物だ」と確信できたことが決め手でした。

私が投げかける質問に対し、優しくほほえみながら誠実に、丁寧に答えてくださった松原社長。ビジネスが好きで、Mieleが好きで、人が好き。だからこそ、119年家族経営がつづくMieleの空気がフィットしているのだろうな、と思いました。

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