トップインタビュー『JAXSON/ジャクソン』後編

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トップインタビュー『JAXSON/ジャクソン』後編  

jaxson (ジャクソン)バスタブ

今年3月、ジャクソンの〈Luna1414/シプレッソルナ〉が、世界三大デザイン賞のひとつと言われる “iF Design Award 2018” を受賞。正円のバスタブをふくよかな木曾檜で包んだモデルは、「工業製品であるアクリルバスタブと日本特有の天然素材である檜を融合させた、ユニークかつ完成度の高いデザインとコンセプト」と評されました。

デザインを担当したのは、JAXSON(ジャクソン)の創業者・清水会長。

デザイナーとしての存在感をますます発揮する清水会長に、後編ではアクリルバスタブの開発のお話をうかがいました。

前半のインタビューはこちらをご覧ください

アルフレックス・ジャパンに憧れていた青年時代

ジャクソンの誕生には、アルフレックスの存在が大きく関与しています。アルフレックスジャパン(arflex japan)が誕生したのは1969年。奇しくも清水会長の親戚の経営する工場が、アルフレックスの家具製作を担っていました。開発していたのは後にアルフレックスを代表する家具となる〈MARENCO/マレンコ〉。

「20代のはじめにマレンコの製造、プロモーション、ブランド戦略に接したことが、私の人生を大きく変えました。アルフレックスの、日本のインテリアに大きな影響を与える姿勢、自由でセンスのよい社員が颯爽と働く姿は、とても輝いて見えましたね。

そうした様子を間近で見ていて、『いつか日本のインテリアに影響を与えるような事業を起こしたい』と、本気で思いました

「日本が誇る”風呂文化”で世界に勝負しよう」

その後、家具づくりを学ぶためにミラノに留学。しかし清水会長が選んだのは、家具ではなくバスタブでした。

「アパートのバスタブに浸かっていたとき、これまで行ったイタリアの邸宅が頭に浮かんできたんです。どの家も家具やクロスや絨毯は一流なのに、バスタブにはまったくこだわりが感じられない。同じ住宅の中にあるのに、バスタブはイタリアブランドの家具に追いついていない。それに気がついたとき、『日本が誇る”風呂文化”で世界に勝負しよう』と決めました」

日本に帰国した清水会長は、さっそく自宅近くのガレージを工房として試作品づくりに没頭します。メンバーは奥さまを含むたった4人。1982年、こうしてジャクソンがスタートしました。

日本で初めて、アクリルのバスタブを製造

jaxson (ジャクソン)バスタブ

創業当初はFRPをバスタブ素材に用いていたものの、それから約10年後、アクリルへの転換を目指します。

当時の日本でアクリルのバスタブは前例がなく、全くのゼロからの開発。費やした労力と時間とコストは、膨大なものだったそうです。

「アクリルにこだわったのは、世界を視野に入れていたから。いくらデザインがよくても、素材がチープなものであったら絶対に受け入れられません」

しかし、”金型”が必要なアクリルバスの製作はコストが掛かる。とはいえ型の精度が悪ければ、商品も悪い。まわりには教えを仰ぐ人もいません。さらには、つなぎ目のない『一体成型』にこだわった。まるでオールのない船を漕ぐように、終わりの見えないチャレンジでした。

アクリルの美しさを引き出すため、シームレスレスにこだわった

「パーツごとに接合するならもっと簡単だったでしょう。でも一番アクリルの美しさを引き出すためには、どうしてもシームレスにこだわりたかった。

アクリルは真っ直ぐにしても元に戻ろうとする。これを「ひけ」と言うんですが、それを考えて型をつくります。アクリルの戻り比をデータをとるために、何枚もアクリルを捨てなければならない。高価なアクリルシートが大量にゴミになっていくのを目にするのは、とても辛かったですね」

アクリルの素材とシームレスにこだわることは、清水会長に長い年月と莫大なコストを要求しました。それでも清水会長は諦めません。『アクリルのバスタブが世界を変える』という、絶対的な確信があったからです。

「今でこそアクリルのバスタブは一般的になりましたが、ジャクソンのように、深く複雑なデザインの浴槽をアクリル一体成型でできる会社は他にないでしょう。開発の苦労は相当なものでしたが、無駄になっていません」

完璧なまでに美しく、身体に寄り添うバスタブの誕生

Prince Hotel Shinagawa/Main Tower Superior Double

試行錯誤を重ねて採用したのは、高温に熱したアクリルシートを金型に置き、空気を吸引して真空形成するという方法。洗練されたシルエット、内側からあふれるような輝き、そして湯を張ったときのクリアな”ジャクソンブルー”。完璧なまでに美しく、従順と言えるほど身体に寄り添うバスタブの誕生です。

「いつかはジャクソンのバスタブを使ってみたい」

人々はまるで高級車を求めるように、1つのブランドとしてジャクソンの名を口にします。手に入れることによって、確実に豊かな暮しが約束されているとでもいうように。

それにもかかわらず清水会長は、『夢のある製品を出せているかどうか』と自身に問い続けていると言います。

「今までジャクソンのバスタブを買ってくださったお客さまに対して、ブランドとしての責任があります。『ジャクソンはずっと夢のある製品を出し続けている。やっぱりジャクソンのバスタブを買ってよかった』と誇りに思っていただきたいんです」

インタビュー後記

雑談中に「清水会長はどんな家にお住まいですか?」と聞いてみると、偶然お持ちだったご自宅の写真を見せていただけました。

一言でいうと「19世紀後半のヨーロッパの重厚な邸宅」といった印象。イタリアフィレンツェから持ち帰った玄関ドア、トルコの暖炉、スペインのガス灯。出張中に時間を見つけては、現地の友人とアンティーク市場を巡るそうです。幻想的なロートアイアンの門扉は、ご自身でデザインしたもの。

「 “家は使っていくうちによくなるほうがいい”という考えです。ですから新築のときよりも、だんだん暮らし心地がよくなっていますね。それに家内が『デザインよりも、間取りと動線が大切』といって、まず暮らしやすさを重視しましたから。間取りが決まったら、私がディテールをデザインしていきました。やっぱり、家族みんながたのしめる家じゃないと。

その中でお風呂はとても重要な役割を果たしていますね。だって湯船に浸かると、みんなプラス思考になるでしょう?」

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家具のように美しく、身体によりそう心地よいバスタブをつくり続けています。青山骨董通りにもショールームあり。クラフトの青山モデルルームのご近所です。

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