高級バスタブブランド〈JAXSON〉の創業者でありデザイナーとして、トップを走り続けてきた清水秀男氏。「バスタブは設備ではなく家具」という信念のもと、美しいバスタブで日本の入浴文化を世界へ発信してきました。そんな清水氏が今年5月、東京赤坂に自身のオリジナルブランド〈HIDEO(ハイデオ)〉の旗艦店をオープン。
コレクションは「置き型」のみ。すべてのバスタブに共通するのは、おだやかな曲線と深い陰影、そして圧倒的な存在感。そこにあるだけでため息を誘う芸術作品のように、空間の空気を変えてしまいます。
旅するような愉しさで巡る、12のバスタブシーン
外からは視線が遮られ、中をうかがうことができない〈HIDEO〉のショールーム。ドアを開けるとオリジナリティに満ちた世界観に一気に引き込まれます。ダークグレーを基調とした空間にゆったりとレイアウトされているのは、16モデルのバスタブ。あえて照明を抑えたほの暗さの中で、白いバスタブが月夜のように浮かんでいます。
「ガレージバス」「シアターバス」など、12のシーンでコンセプチュアルに展示。動線上にはオリーブの古樹などが設けられており、ブースの移動はまるで旅するような愉しさがありました。
独自のフォルムと深い陰影。彫刻のように静謐なたたずまい
〈HIDEO〉のバスタブはアクリル樹脂系人工大理石が使うことで、成型方法がこれまでとは大きく変わりました。それにより広がったのがデザインの自由度。これまで不可能だった3次元の独特のフォルムが可能となったのです。
曲線と直線でリズミカルに構成された〈HIDEO〉のバスタブ。さらにマットな質感のため、シルエットと陰影が際立ちます。はっきりとしたコントラストがバスタブに表情を与え、まるで彫刻のように静謐な美しさがただよっていました。
リムの厚みは15mm。無駄なボリュームを排除し繊細に仕上げつつ、バスタブに浸かったときに実際のサイズよりもゆとりを感じさせるという合理的な一面も。体をホールドさせるフットストッパーやアームレストは、デザインの一部とおもわせるようなさりげなさ。見た目の美しさを徹底的に追求していることがわかります。
ジェットバス機能をあえてなくしていることも〈HIDEO〉の大きな特徴です。「温かい湯に浸かる」という日本人の普遍的なよろこびを味わうため、またバスタブ自体の美しさを際立たせるために、機能は極めてシンプルです。
日本の入浴文化を世界にもっと届けたい
清水氏がバスタブのデザインをはじめたのは、今から40年ほど前。20代の頃に「日本のインテリアを変える何かをしたい」とイタリアミラノに渡り、インテリアデザインを学んだ後、1982年に〈JAXSON〉を創業。
以来〈JAXSON〉のバスタブはグランドハイアットソウル、マンダパ・リッツカールトン・リザーブバリ、マカオMGM GRAND、シャングリ・ラホテル東京といった国内外の一流ホテルに導入されるなど、世界が認める高級バスタブブランドとなりました。
今回〈HIDEO〉を立ち上げたのは、自身のあふれるデザインのアイデアで、固定概念を打ち破るバスタブを自由につくるため。日本の入浴文化を世界にもっと発信するため。〈HIDEO〉の誕生は、バスタブが設備ではなく、家具やアートになりうることを証明しています。
〈Theatro(テアトロ)〉ソファのように3人で並んで
〈HIDEO〉を象徴するフラッグシップモデル〈Theatro(テアトロ)〉。イタリア語で「シアター」を意味する通り、3シートソファーのように一列に並んで座り、半身浴やフッドバスをたのしむことができます。
たとえば自宅のバスルームで映画を観ながら、またはアウトドアリビングで景色を眺めながら。ソファのような感覚でバスタブを自由にレイアウトするという大胆な発想です。リビングで過ごす以上に、リラックスしたコミュニケーションが生まれそうです。一人で入浴する際は、深いところに腰を下ろして肩まで浸かることもできます。
TT-1770 W1770xD1320xH620mm ¥ 3,685,000(税込)
〈Arte(アルテ)〉可憐なオブジェのように
古い映画のワンシーンに出てきそうな〈Arte(アルテ)〉。イタリア語で「アート」を意味します。一見コンパクトながら、リムが薄く背中まわりに大らかな曲線があるため、見た目以上にゆったりとした入り心地です。有機的な形状のボディはもちろん、それを支える金属フレームがアクセントとなりよりラグジュアリーな雰囲気に。バスルームの中央に置いてずっと眺めていたくなるような、可憐な美しさがありました。
AR-1650 W165×D85×H61cm ¥2,310,000(税込)
まとめ
これまでのバスタブの概念を根底から覆す、革新的なデザイン。一方で「浸かったときの心地よさ」「家族のコミュニケーション」といった日本の昔ながらの入浴スタイルをうかがわせる設計となっていました。どのモデルも「肩までしっかりと浸かることができる深さ」となっており、清水氏の「日本の入浴文化」へのこだわりを感じます。
HIDEO TOKYO内には〈Loro Piana Interiors〉のカーテン、〈GiGi〉の収納がさりげなくディスプレイされてました。ライフスタイルを上質に彩るブランドとコラボレーションしながら、新たな暮らし方を提案する〈HIDEO〉。今後の期待が高まります。
デザイナー清水秀男氏が提案する、ラグジュアリーな置き型バスタブのコレクション。旗艦店HIDEO TOKYOの見学は完全予約制。