イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】 | リノベーションスープ

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イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

まだまだ収束が見えない、コロナウイルスの世界的な流行。そんななか、2020年8月20日に、日本のモダンインテリア界を牽引する2社、アルフレックス ジャパンとカッシーナ・イクスシーの主催により、ウェビナー【コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】が開催されました。

ウェビナーとは「ウェブ+セミナー」のこと。この無観客で実施されるイベントの形式自体が、コロナ禍のいまを象徴していると言えそうです。2000名もの視聴者が閲覧した、ウェビナーの様子をレポートします。

アルフレックス ジャパンとカッシーナ・イクスシーについて

今回のウェビナーは、アルフレックス ジャパンの保科卓社長とカッシーナ・イクスシーの森康洋社長、司会のifs未来研究所所長でジャーナリストの川島蓉子氏による3名でのディスカッション形式。終始和やかな雰囲気で進行しました。
 

アルフレックス ジャパン

1969年設立。現在は、arflexを中心にシステム収納の「Molteni&C(モルテーニ)」、キッチンの「Dada(ダーダ)」アウトドアファニチャーの「RODA(ロダ)」、無垢材家具の「Riva 1920(リーヴァ)」と5つのブランドを扱っている。2019年に50周年を迎えた。
 

カッシーナ・イクスシー

1980年設立。「カッシーナ」の国内独占輸入販売を行うほか、家具、照明、ファブリック、アート、雑貨など様々なセレクト・オリジナルアイテムを扱う「イクスシー」ブランドを展開。2014年にライフスタイルショップ「ザ・コンランショップ」、2016年にキッチンブランド「SieMatic(ジーマティック)」をグループ会社化し、家具からキッチン、個性的な雑貨までトータルに提案。2020年に40周年を迎えた。

コロナで変わった暮らし

コロナによって、多くの人が家で長い時間を過ごすようになりました。両社長にとっても、住まいや暮らしを見つめ直す機会になったそうです。

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

画像:カッシーナ・イクスシー 森康洋社長
 
森社長
「働く時間が圧倒的に減りましたよね。私自身、回遊魚のように朝から晩まで動いていましたが、ステイホームしなければならなくなりました。」
「家で長く過ごしてみると、暮らしに目が行くようになりました。家具や食器、ラグやカーテンなど…。誰もがそうではないかと思います。」

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画像:ifs未来研究所 川島蓉子氏/アルフレックス ジャパン 保科卓社長

保科社長
「3人の子どもが留学先から帰国しまして、家が狭くなりました(笑)。これまで家族5人で長く一緒に過ごすことがなかったので、ありがたい時間になっています。」
「料理もするようになって、キッチンの重要性を実感しました。自社で扱っている製品を見直すことにもなりましたね。」

住空間はどう変わっていくのか

テレワークの推進により、「職」と「住」の境界がはっきりしなくなったことで、住空間のニーズにも変化が現れています。

森社長
「これまでは多くの人が長い通勤時間に縛られていましたが、テレワークによって自宅で仕事ができるのなら、距離はハンディキャップではなくなりますよね。」
「家で仕事をするならそのスペースも必要になりますから、住まいのデザインそのものが変わっていくと思います。」

保科社長
「お客さまに、リフォームの提案を求められますが『サイドテーブルやちょっとした書斎スペースを設けたい』という要望がほぼ100%入るようになりました。これまではそんなことはありませんでしたから、レイアウトや採用する設備の変化を間違いないものとして感じています。」

住まいの快適性とは?

コロナ禍をきっかけに、保科社長はこれまでの常識にとらわれない新しい暮らし方を実践しているのだそう。

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

画像:1980年代後半 富士山麓に建てられたリゾートハウス<カーサ・ミア・ジラゴンノ>

保科社長
「約30年前、バブルによる地価高騰を受け、東京一極集中を避けてつくった施設(カーサミア河口湖)があります。コロナでリモートワークをすることになり、私はここで仕事をしていました。」
「この施設のすぐ近くには、当時開発・販売した集合住宅があるのですが、たまたま5月の中旬にその一棟が売りに出ていることが分かりました。ちょうど河口湖にいたのですぐに電話をして、見に行きましたら非常に綺麗に使われていました。その後はトントン拍子に話が進み、7月上旬には売買が成立して、今は半分こちらに住んでいるんです。」

真の豊かさとは?

いよいよコロナ禍によって浮かび上がる「真の豊かさ」について、核心に触れていきます。これからは「自分にとっての価値」が重要になりそうです。

保科社長
「河口湖に住み始めてまだ2週間ほどです。環境の良さもありますが、コロナで急にテレワークに切り替わったことで『時間・空間の制約のない暮らし』の豊かさを感じています。」
「30年前に一極集中からの脱出を当社が提案した際、本社移転も視野に入れており、東京から移り住んだ社員も何人かいました。東京では高額な土地を購入して小さな家を建てますが、(郊外では)完全に逆になり、大きな土地が手に入り、その分上物に資金が掛けられます。たまたまコロナに背中を押される形となりましたが、郊外での暮らしがまた見直されていくと思います。」
自分の時間や空間に、もっと貪欲にアンテナを張ってもいいんじゃないか?と、少なくとも当社ではそのような提案をしていきたいと思います。」

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

森社長
「コロナ以前の社会は、グローバル化・情報化を進め、商業施設や会社に人をたくさん集めて行うビジネスモデルでした。ところがコロナによって、これまでの会社を中心にした日本人のライフスタイルが否定されたわけです。」
「Cassina本社とテレワークで話をしますが、イタリアは5月初旬までロックダウンを実施していたので『まさか今年夏休みは取らないですよね?』と尋ねると、『何を言っているんだ。バケーションはバケーションだ。』と(笑)。自分の暮らしにとって大切なものがはっきりとあるんですね。」

「(日本人は)人とモノを集め効率化を進めて働き続けてきました。そしていざ家の中を見直してみたら、物にあふれている。所有することを目的にモノを買っていた人も多いわけです。そこで断捨離・整理をしてみて、本当の心地よさについて考えるようになった。『心地いいこと』は人それぞれ違いますから、自分にとっての『心地よさのフィーリング』を持つことが豊かさの原点になるのではないでしょうか。」
消費する文化から、良いものを長く使っていく価値観になれば、日本人の暮らしも変わっていくと思います。」

リアルはどのような価値を持つのか?

コロナ禍で社会のデジタル化が強制的に進んだ側面はありますが、両社長ともリアルの大切な部分は変わらないとお考えでした。

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画像:カッシーナ・イクスシー青山本店

森社長
「相反するもののどちらに価値を置くかではなく、両方のプラス面を『良いとこ取り』をするべきですね。人は、人と接触しなければ生きていけませんから、私達のようなビジネスでは、(eコマース・リアル店舗)どちらかだけに振れるということはないと思います。リアルの価値とは、お客さまそれぞれの趣味趣向・感情に寄り添った、デジタルでは味わえないようなサービスを提供することですね。」

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

画像:アルフレックス東京

保科社長
「コロナ禍のなかで『バーチャルショップをどうするか』という議論がありましたが、立ち上げていません。やはり家具はリアルの感触や座り心地が大切ですから、ご来店いただこうと。決済などお店に来なくても良い部分はオンラインでできるようにして、メリハリを付けてバーチャルとリアルの価値をお客様が選べるようにしていくことが、次のフェーズになります。」

コロナ禍によるニーズの変化

最後に、視聴者からの質問がありました。
『家の中を見直す人が増えているとのことですが、実際にはどんな家具が売れているのでしょうか?」

イベントレポート【arflex × Cassina ixc. コロナ禍に求められる「真の豊かな暮らし」】

森社長
メンテンス・修理のご依頼がとても多いです。10年前・20年前に家具をお買い求め頂いたお客様さまが、家で過ごす時間が長くなり家具の経年劣化が気になるようになったと。買い替えも検討したが、家族の思い出が詰まった家具を修理してもらいたい、というご相談がとても増えてきました。」
「もうひとつは、さきほど断捨離の話をしましたが、家の中にたくさん物を置くのではなく、質の良い長く使える物を求めるお客さまが増えていると思います。」

保科社長
「全く同じです。毎年メンテンナンスキャンペーンがあり今年もこの時期にちょうど実施していたのですが、前年よりも明らかに伸びています。あと、飾り棚やパーソナルソファなど、家の中で過ごす時間がある時に高まるニーズの商品が顕著に売れています。傾向は明らかに変わっていますね。」

まとめ

コロナ禍において、多くの人が働く場所にとらわれなくなりました。社長おふたりにとっても、住まいの快適性や機能性を今一度見直す機会になったそうです。また、これまでの大量のモノを所有・消費する文化から、品質の良い物を長く大切に使う価値観にシフトしていくとお考えでした。自分にとって本当に大切なものは何なのか、どのように暮らしていくべきなのかを再考することで「真の豊かさ」が見えてくるのではないでしょうか。

日本のインテリア界を代表する、2人の社長によるウェビナー。興味深いお話と気さくな雰囲気に、1時間があっという間に過ぎました。かつてない世界的パンデミックの時代は、「真の豊かさ」について考える転換期になりそうです。

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