北欧インテリアの黄金期は、1940〜70年代だった | リノベーションスープ

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北欧インテリアの黄金期は、1940〜70年代だった

北欧インテリアの黄金期は、1940〜70年代だった
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ビートルズの曲に〈Norwegian Wood〉というものがあります。邦題は〈ノルウェーの森〉。繊細なメロディーで、ノルウェーの森を幻想的にイメージさせてくれる素敵な曲です。

しかし歌詞は曲のイメージと正反対。ある女の子の部屋に行ったら、ノルウェーの家具やノルウェーの木材に囲まれたウッディーなインテリアだった。僕はきちんとバスルームで寝たから、やましいことは何もないんだよ。という内容。Norwegian Woodは、〈ノルウェーの家具〉〈ノルウェーの木材〉と訳した方が、実は正しいのだそうです。

内容はともかく、この当時、ノルウェーの家具や木材がイギリスで広く流通していたことがわかりますね。この曲がリリースされたのは1965年。ノルウェーデザインの黄金期です。ビートルズの歌になるほど流通した、ノルウェーデザインの家具やプロダクトをご紹介します。

ノルウェーインテリアの黄金期は1940〜70年代

デンマークやスウェーデン、フィンランドといった北欧諸国のなかで、ノルウェーデザインはあまり目立たない気がしませんか?

北欧ヴィンテージのインテリアショップでノルウェーの家具に出会えたら、「おっ」と思ってしまうほど。しかし1940年~70年のノルウェーのデザインは、控えめで素朴なかわいらしさがあります。

ノルウェーデザインは、1930年代、ドイツのバウハウスデザインがノルウェーにも押し寄せたことから、著しく発展しました。ところが70年代、ノルウェーで北海油田が発掘されました。

これまでは農業とデザインに頼った貧しい国だったのに、一気にエネルギー輸出大国に。これをきっかけにデザインビジネスは衰退。以降、近隣のデンマークやスウェーデンといった北欧諸国との間にデザインの格差が生まれてしまいました。

ハンス・ブラットルの〈スキャンディアチェアシリーズ〉

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同じ北欧デザインでも、国ごとにデザインに特徴がありますね。白をベースにした家具が多いスウェーデンに対し、ノルウェーは木材がゆたかなこともあり、木を使った家具が目立ちます。また日照時間が短いことから、「少しでも室内で過ごす時間を大切にしたい」とノルウェーの人々がインテリアにこだわるようになったのは当然の流れかもしれません。

ミッドセンチュリーのノルウェーインテリアを代表するのは〈スキャンディア チェア(Scandia chair)〉シリーズ。今でも名品として人気は衰えず、ヴィンテージとして高価格で取り扱われています。

こちらは1957年、ノルウェーのデザイナー・ハンス・ブラットル(Hans Brattrud)によってデザインされました。その後、〈Scandia Tilt〉〈Scandianette〉〈ScandiaSenior〉などさまざまなシリーズが登場。なかでも細い合板を8枚並べてデザインした〈Scandia Jr.〉は、1967年にバイエルン州の金賞を受賞しています。

先述した理由もあって〈スキャンディア チェアシリーズ〉の生産は一旦終了。しかし2004年にフィヨルドフィエスタ(fjordfiesta)社より復刻し、ファンを喜ばせました。

グレーテ・プリッツ・キッテルセンの〈ロータスシリーズ〉

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レトロカラーで描かれた蓮の葉がモチーフのやさしい、エナメルホーローのテーブルウェア。

オープンシェルフに飾るとキャッチーな可愛らしさを発揮し、女性のファンが多いのもうなずけます。寒い日は熱々のお鍋をテーブルに置くだけで、食卓があたたかく華やぎそうですね。

こちらのロータスシリーズは、ノルウェーのホーローメーカーのキャサリンホルム(Cathrineholm)社が、1956年~1972年の15年間だけ生産したという希少性の高いもの。当時もこの鮮やかな色とシンプルな模様が人気で、北欧や北米で爆発的に売れたそうです。

デザインしたのはグレーテ・プリッツ・キッテルセン(Grete Prytz Kittelsen)。キャサリンホルム社のデザイナーとして活躍し、食器やお皿、小物などさまざまなデザインを残しました。

元祖ゆるかわフィッギョの〈ロッテシリーズ〉

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可愛らしい少女が、草木に囲まれて物思いにふけったり、恋人と語り合ったり。その様子が、やさしいブルーでほのぼのと描かれています。こちらの〈ロッテシリーズ〉は、日本でもコレクターが多いテーブルウェア。見ているだけで当時のあたたかい市場の空気が伝わってくるようですね。

これらは、ノルウェーの老舗陶磁器メーカー・フィッギョ(FIGGJO)社が1970年代に生産したもの。デザインしたのは、当時ノルウェーでも人気のあった女性デザイナーのチゥーリ・グラムスタッド・オリヴァー(Turi Gramstad Oliver)です。1960年~80年にかけてフィッギョ社で活躍しました。

今でもノルウェーの高級レストランではFIGGJO社のプレートやカップが使われているとか。ノルウェーの人々にとっては、とても親しみのあるテーブルウェアメーカーのようですね。

1960年代のノルウェーインテリアを学ぶなら〈フグレン〉

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代々木公園のすぐ近くに、ノルウェーインテリアとコーヒーをたのしめるカフェ〈フグレン・トウキョウ〉があります。本店はノルウェーの首都オスロです。

店内は1940~70年代、まさにノルウェーデザインの黄金期につくられた家具や食器、雑貨などが素敵にコーディネートされています。素敵な花柄のワンピースを着たノルウェーのおばあちゃまが、おいしいコーヒーを淹れてくれそうな雰囲気。

実際にコーヒーを淹れてくれるのはバリスタですが、ノルウェーのコーヒーをたのしむことができます。新鮮で上質な豆のため浅煎りにこだわり、少し酸味が強め。フルーティーな味わいにファンが多く、いつも常連客でにぎわっています。

店内の家具や食器はすべて購入可能で、ノルウェー家具のショールームとしての役割も。注目したいのは、藁(ワラ)でできたクロス。こちらはノルウェーで多く見られる伝統工芸なのだそう。自然素材である藁は、一本ごとにカタチがちがうため、壁からも手づくりの表情をたのしむことができます。もちろんこちらのクロスも購入可能です。

ノルウェーインテリアの参考にもなるこちらのカフェ。一点もののノルウェー家具がきっと見つかるはずです。

ノルウェーのヴィンテージインテリアのなかで、ノルウェーコーヒーをいただける。フードの持ち込みOK。19:00からはバータイムに変わる
 
フグレン・トウキョウ facebook

まとめ

北欧のなかでインパクトの薄いノルウェーですが、実はこんな個性的な家具やプロダクトをつくってきました。1960年代のイギリスだけでなく、世界中でノルウェーインテリアが親しまれていたことは、ジョンレノンに聞くまでもありません。

木のぬくもり、やさしい色使い、絶妙な力の抜き具合は、ノルウェーデザインならでは。

ちなみに、〈フグレン〉で見ることができるのですが、1960~70年代にかけてつくられたノルウェーの陶器は、日本の影響を受けています。当時のノルウェーの作家たちが日本に陶器を学び、デザインに取り入れているのだとか。そう言えば、ノルウェーの藁のクロスも、日本家屋の葭(ヨシ)張り天井と似ていますね。

余白や侘び寂びにうつくしさを見いだす日本人の感性に、すこし似ているような気がしませんか? 日本デザインとノルウェーデザインは、通じ合うものがありそうです。

日本の暮らしに自然に溶け込むノルウェーインテリア。この冬、ぜひ取り入れてみてください。

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